【プロ直伝】アンテナの耐久性を高める設置方法と定期点検のポイント

大切なテレビ視聴を支えるアンテナですが、強風や雨、雪、紫外線などの自然環境にさらされ続けると、徐々に劣化していきます。
「アンテナは一度設置したら終わり」と思っていませんか?実は適切な設置方法と定期的な点検がアンテナの寿命を大きく延ばすのです。
この記事では、アンテナの耐久性を高める設置方法と、自分でできる定期点検のポイントをご紹介します。
正しいメンテナンスで安定した映像を長く楽しみましょう。
2025年04月26日更新
監修
前田 良三
アンテナ工事技術者
保有資格:一級電気工事施工管理技士, 第一級陸上特殊無線技士, 高所作業車運転技能者
専門分野:テレビアンテナ工事, 電波障害対策
大手電器メーカーでアンテナ設計に10年従事した後、独立してアンテナ工事会社を設立。20年以上の経験を持ち、難しい電波受信環境でも最適な設置方法を提案するスペシャリスト。「どんな家でもクリアな映像を届けたい」をモットーに、常に最新の技術と知識を追求しています。当サイトでは、一般のご家庭でも実践できるアンテナ選びのポイントをご紹介いたします。
アンテナの劣化要因「7つのポイント」
アンテナがどのような要因で劣化するのかを知ることは、耐久性の高い設置方法を選ぶ第一歩です。主な劣化要因は以下の7つです。

屋外アンテナはさまざまな自然環境の影響を受けます
1. 風圧による物理的負荷
強風や台風によってアンテナに繰り返し負荷がかかると、支持部分が徐々に緩み、アンテナの向きがずれたり、最悪の場合は破損したりします。特に海沿いや高台、高層住宅の屋上などは強風の影響を受けやすく注意が必要です。
風速60m/秒の強風でも耐えられるよう設計されたアンテナも市販されていますが、支持部や固定方法が弱いと意味がありません。アンテナ本体の強度だけでなく、設置方法全体で風圧に対する耐性を考える必要があります。
2. 雨水や雪による腐食
アンテナ本体やマストは防水・防錆処理がされていますが、長期間にわたる雨水の侵入や積雪の重みによって徐々に劣化します。特に接合部分や固定金具は水がたまりやすく、腐食の原因になります。
そうですね。雪国では雪の重みでアンテナが変形することもあります。また、雪解け水が金属部分に長時間触れることで腐食が進みやすくなります。軒下などの雪が積もりにくい場所への設置や、防水処理の徹底が重要です。
3. 紫外線による劣化
強い日差しに長時間さらされると、アンテナの樹脂部分や塗装が劣化し、素材の強度が落ちたり変色したりします。これにより防水性能が低下し、内部への水の侵入リスクが高まります。
4. 鳥害・虫害
意外と多いのが鳥害です。鳥がアンテナに止まって巣を作ったり、フンを落としたりすることで、受信性能に影響が出たり、部品の劣化が早まったりします。また、虫が内部に侵入することでショートの原因になることもあります。
ワンポイントアドバイス
アンテナの劣化は目に見えないところから始まることが多いです。特に接続部や固定部は雨水がたまりやすく、早期に腐食が始まる傾向があります。定期的にこれらの部分を点検することで、大きなトラブルを未然に防げます。
耐久性を高める設置方法
アンテナの耐久性は、設置時の工夫によって大きく向上させることができます。ここでは、プロが実践している耐久性を高める設置方法をご紹介します。
最適な設置場所の選定
まず最も重要なのが設置場所です。以下のポイントを考慮して場所を選びましょう。
- 強風の影響を受けにくい場所(建物の風下側など)
- 積雪の影響を受けにくい場所(軒下など)
- 雨水がたまりにくい場所
- 日陰になる場所(紫外線の影響を軽減)
- メンテナンスがしやすい場所(安全に点検できる)
推奨される設置場所

設置場所による耐久性の違い
屋根の上より壁面設置の方が耐久性の面で有利なケースが多いです。壁面なら風の影響を受けにくく、雪も積もりにくい。さらに点検やメンテナンスも安全に行えます。ただし、電波の受信状況を優先する必要があるので、場所選びは慎重に行いましょう。
適切な設置金具と固定方法
アンテナの耐久性を左右する重要な要素が設置金具と固定方法です。
- ステンレス製や溶融亜鉛メッキ処理された錆びにくい金具を使用
- 十分な強度の支持金具を使用(特に風の強い地域では重要)
- 固定ボルトの適切な締め付け(緩すぎず、きつすぎない)
- 振動防止のためのゴムワッシャーの使用
- 防水処理の徹底(シリコンコーキングなど)
DIYでアンテナを設置する場合にも気をつけるべきことはありますか?
DIYの場合は特に、適切な工具と金具を使うことが大切です。ホームセンターで売っている安価な金具は耐久性に問題があることも。専門店で屋外用のステンレス製金具を選びましょう。また、防水処理は妥協せず、屋外用のシリコンシーラントを使って丁寧に処理してください。
防水・防錆対策
アンテナを長持ちさせるためには、徹底した防水・防錆対策が欠かせません。
- 接続部分の防水処理(自己融着テープやブチルゴムテープの使用)
- ケーブル接続部への防水キャップの装着
- 定期的な防錆スプレーの塗布
- 水抜き穴の確保(水がたまらない構造に)
接続部の適切な防水処理はアンテナの寿命を大きく延ばします
避雷対策
落雷による被害からアンテナや接続機器を守るための対策も重要です。
- アース(接地)工事の実施
- サージプロテクター(雷サージ防護装置)の設置
- アンテナとテレビの間にアレスター(避雷器)を設置
プロが教えるワンポイント技術
接続部の防水処理では「二重防水」がおすすめです。まず自己融着テープで巻き、その上からビニールテープで覆います。これにより紫外線から自己融着テープを保護でき、長期間の防水効果が期待できます。
定期点検のポイント
アンテナの寿命を延ばし、突然のトラブルを防ぐためには定期的な点検が欠かせません。年に2回程度、特に台風シーズンの前後に以下のポイントを確認しましょう。
安全な点検方法
まず、点検を行う際の安全確保が最も重要です。無理な体勢での作業は事故の元となります。
- 脚立や梯子を使用する場合は、必ず安定した場所に設置
- 可能であれば双眼鏡や望遠カメラでの遠隔点検
- 屋根の上など危険な場所での点検は専門業者に依頼
- 雨天時や強風時の点検は避ける
安全を最優先に考えてください。特に高所作業は専門の知識と器具が必要です。壁面設置のアンテナなら地上から脚立での点検が可能ですが、屋根設置の場合は双眼鏡などを使用するか、プロに依頼するのが安全です。
外観点検のチェックポイント
目視での点検で確認すべきポイントは以下の通りです。
- アンテナの傾きやゆがみがないか
- エレメント(アンテナの突起部分)の破損や脱落がないか
- 支持金具やボルトの緩み・錆びがないか
- マストのぐらつきがないか
- ケーブルの劣化(ひび割れ、変色)がないか
- 鳥の巣やフンの付着がないか
受信状態の確認
外観だけでなく、実際の受信状態も定期的に確認しましょう。
- テレビのリモコンで「信号レベル」や「受信レベル」を確認
- 画面の乱れや中断がないか
- 天候の変化で受信状態が極端に変わらないか
- 複数のチャンネルで確認(特に受信しにくいチャンネル)
テレビのリモコンで信号レベルが確認できるんですね!どうやって確認するの?
多くのテレビには「受信レベル表示」という機能があります。リモコンの「メニュー」ボタンから「設定」や「受信設定」などを選び、「アンテナレベル」や「信号強度」という項目で確認できます。メーカーによって操作方法が異なるので、お使いのテレビの取扱説明書をご確認ください。一般的に50%以上あれば問題ありません。
アンテナの寿命を延ばすプロのコツ
日々の心がけや定期的なメンテナンスで、アンテナの寿命は大きく変わります。ここではプロの技術者が実践している寿命延長テクニックをご紹介します。
定期的な清掃
アンテナに付着した汚れや塩分は劣化を早める原因になります。特に海岸近くでは塩害の影響が大きいため、定期的な清掃が効果的です。
- 年に1~2回の清水での洗浄(高圧洗浄は避ける)
- 鳥のフンはこまめに拭き取る
- 洗浄後は十分に乾燥させる
防錆スプレーの定期塗布
金属部分への防錆スプレーの塗布は、錆の発生を予防し、アンテナの寿命を延ばす効果があります。
- 年に1回、梅雨前の塗布がおすすめ
- ボルトや接合部など錆びやすい部分を重点的に
- 電気接点部分には専用の接点復活剤を使用
防錆スプレーは電気店やホームセンターで簡単に手に入ります。CRC556やKure5-56など、浸透性と防錆効果の高い製品がおすすめです。塗布する際は周囲を汚さないよう、新聞紙などで覆ってから使用してください。
ケーブル保護の工夫
アンテナケーブルは紫外線や雨風により劣化します。以下の保護対策を行いましょう。
- 屋外部分は専用の保護管(PVCパイプなど)に通す
- ケーブルの屋内引き込み部分は「ドリップループ」を作る(水が室内に流れ込まない対策)
- 壁面を這わせる場合は専用のケーブルフックで固定(振動による摩耗防止)
- ケーブルを極端に曲げたり、引っ張ったりしない
余分な力がかからない設置方法
アンテナやマストに余分な力がかかると、徐々に変形したり固定部分が緩んだりする原因になります。
- アンテナとマストのバランスを考慮した設置
- 風の抵抗を最小限にする向きでの設置
- 支線(ステー)の適切な使用(特に長いマストの場合)
- 適切な締め付けトルクでのボルト固定(締めすぎ・緩すぎに注意)
耐久性に優れたアンテナ選びのポイント
アンテナ自体の耐久性も大切です。素材がアルミニウム合金製か、防水性能が高いか、風圧に強い設計かなどをチェックしましょう。また、メーカー保証期間の長さも耐久性の目安になります。一般的に高価格帯のアンテナほど耐久性に優れる傾向があります。
台風や大雪の後に確認すべきこと
台風や大雪などの自然災害の後は、アンテナに大きな負荷がかかっている可能性があります。以下のポイントを確認しましょう。
外観チェック
- アンテナの向きのずれや変形
- エレメントの破損や脱落
- マストや固定金具の緩み
- ケーブルの断線や被覆の損傷
- 支線(ステー)の張り具合
台風で映りが悪くなったら、すぐに自分で直した方がいいんでしょうか?
まずは安全第一です。大きな破損や高所での作業が必要な場合は、無理せずに専門業者に依頼しましょう。地上から安全に確認できる範囲でチェックを行い、微調整が必要な場合でも十分な安全対策を講じてください。
受信状態の確認
災害後は特に以下の点に注意して受信状態を確認しましょう。
- 全チャンネルの受信状態を確認
- 雨や雪の影響で一時的に受信状態が悪くなっていないか
- 天候が回復した後も受信状態が改善しないか
緊急対応
台風や大雪の後に緊急の対応が必要な場合の暫定措置です。
- 損傷したケーブルの応急処置(自己融着テープでの仮補修)
- アンテナの向きの簡単な調整(大きく変形していない場合)
- 接続部の緩みの増し締め
災害発生前の事前対策
台風が予想される場合は、あらかじめアンテナの写真を撮っておくと、災害後の状態変化を確認しやすくなります。また、ボルトの緩みがないか事前にチェックしておくことで、大きな被害を防げる場合もあります。
修理か交換か、判断のポイント
アンテナにトラブルが発生した際、修理で対応するか交換すべきかの判断は難しいものです。ここでは、プロの視点から見た判断ポイントをご紹介します。
修理が適している状況
- 設置から5年以内で、部分的な破損のみ
- エレメント1~2本の破損や脱落
- マストやブラケットの緩みのみ
- ケーブルの部分的な損傷
- アンテナ本体は無傷で向きのみずれている
修理の際は、損傷した部品だけでなく、関連する部分も点検することをおすすめします。例えば、エレメントが破損していた場合、その他のエレメントや固定部分も弱くなっている可能性があります。
交換が推奨される状況
- 設置から10年以上経過している
- 複数箇所の大きな破損がある
- アンテナ本体の大きな変形や曲がり
- 受信部の腐食が進行している
- 修理費用がアンテナ交換費用の50%以上になる
- 4K・8K放送など新しい放送方式に対応したい
判断項目修理の目安交換の目安設置年数5年以内10年以上損傷の程度部分的複数箇所・広範囲受信状態一部チャンネルのみ不良全体的に著しく劣化費用対効果修理費が新品の50%未満修理費が新品の50%以上
地デジ化の時にアンテナを交換したけど、そろそろ10年経つかも。交換のタイミングってどう判断すればいいですか?
地デジ化が2011年頃ですから、その時に設置したアンテナは確かに交換時期が近づいています。受信状態に問題がなくても、10年以上経過したアンテナは経年劣化により突然のトラブルリスクが高まります。特に4K・8K放送を楽しみたい場合や、新しいテレビに買い替えた場合は、高性能なアンテナへの交換を検討するタイミングと言えるでしょう。
アンテナ長寿命化チェックリスト
アンテナの寿命を延ばすためのチェックリストです。定期点検の際にご活用ください。
- アンテナ本体にゆがみや傾きはないか
- エレメントの破損や脱落はないか
- マストにぐらつきはないか
- 固定ボルトに緩みや錆びはないか
- ケーブルに亀裂や変色はないか
- 接続部の防水処理は健全か
- 支線(ステー)の張り具合は適切か
- 鳥の巣やフンの付着はないか
- 接続ボックスに水の侵入跡はないか
- テレビの受信レベルは50%以上あるか
半年に一度、このチェックリストで点検を行うことをおすすめします。全項目に問題がなくても、設置から10年以上経過している場合は、専門業者による詳細点検を検討しましょう。
アンテナメンテナンスに関するQ&A
自分でアンテナのメンテナンスをしても大丈夫ですか?
安全に作業できる範囲であれば、ご自身でのメンテナンスも可能です。低い壁面に設置されたアンテナなど、脚立で安全に手が届く範囲での清掃や点検は問題ありません。ただし、屋根の上や高所に設置されたアンテナの場合は、転落事故のリスクがあるため、専門業者に依頼することをおすすめします。また、電気的な接続部分や大がかりな調整が必要な場合も、専門知識が必要になります。
アンテナの寿命はどれくらいですか?
一般的なアンテナの寿命は約8~15年と言われていますが、設置環境や日々のメンテナンス状況によって大きく異なります。海岸近くなど塩害の影響が強い地域では寿命が短くなる傾向があります。一方、適切なメンテナンスを行い、風雨の影響が少ない場所に設置すれば15年以上使用できることもあります。また、アンテナ本体よりも先に、ケーブルや接続部分の劣化が進むことが多いので、それらの状態にも注意が必要です。
台風でアンテナの向きがずれた場合、自分で調整できますか?
安全に作業できる状況であれば、簡単な向きの調整は可能です。調整する際は、まずテレビの「受信レベル表示」機能を使って現状の受信状態を確認しましょう。次に、固定ボルトを少し緩め、受信レベルが最大になる方向にゆっくりとアンテナを回転させます。最適な方向が見つかったら、ボルトをしっかり締め直します。ただし、高所での作業は危険ですので、無理せず専門業者に依頼することをおすすめします。
アンテナカバーには紫外線や雨風からアンテナを保護する効果がありますが、風の抵抗が増えるというデメリットもあります。また、カバー内部に湿気がこもると逆に腐食を早めることもあります。通気性の良いメッシュタイプや、部分的な保護カバーがおすすめです。なお、近年のアンテナは耐候性が向上しているため、必ずしもカバーが必要というわけではありません。
受信状態が徐々に悪くなっている場合、どう対処すべきですか?
まずはテレビ側の接続やブースターなどの設定を確認しましょう。それでも改善しない場合は、アンテナの向きのずれや劣化が考えられます。まずは双眼鏡などでアンテナの外観に異常がないか確認し、可能であれば簡単な向きの調整を試みてください。それでも改善しない場合や、設置から10年近く経過している場合は、専門業者による点検や部品交換、場合によってはアンテナ本体の交換を検討する時期かもしれません。
アンテナの塗装は有効ですか?
一般的なアンテナは、工場出荷時に防錆処理や耐候性コーティングが施されているため、通常は追加の塗装は不要です。むしろ、不適切な塗装材を使用すると電波の受信に悪影響を与えたり、塗料が剥がれて見た目が悪くなったりする恐れがあります。ただし、錆が発生している部分に限り、電波を遮断しない専用の防錆スプレーなどで処理することは有効です。不安な場合は、アンテナ専門業者に相談することをおすすめします。
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